春栄

しゅんねい Shunnei

1 概要

宇治橋の合戦で、高橋（たかはし）権頭（ごんのかみ）（ワキ）は増尾春栄（子方）を生け捕り、自身の館で春栄の身柄を預かっていた。高橋は下人（アイ）に春栄の面倒を見るように命じる。春栄の兄・増尾種直（シテ）が従者（トモ）を連れて高橋邸にやってくる。高橋は、種直の太刀と刀を預かり、禁を犯して兄弟を対面させる。春栄は、兄の身を気遣い、兄を「家人だ」と言い張る。兄は、弟の気持ちを思いやり、身代わりとして自害すると言う。お互いを思いやる兄弟は、ともに涙を流す。その様子を見ていた高橋も感動し、春栄を自分の養子にしたいと言う。その時、鎌倉から早打ち（急用の使い）が来て、囚人を処刑せよという命令が下る。兄弟は、ともに処刑を受けることを覚悟し、それぞれ形見を残す。そして、二人は処刑を待つ。処刑が執行される直前、赦免使（ワキツレ）が春栄を赦免する旨が書かれた赦免状を持って到着する。兄弟・高橋がともに喜ぶ。高橋は春栄を己の養子にしたいと言う。酒宴を催した高橋は、春栄に先祖代々の太刀を春栄に与え、喜びの舞を舞う。種直も舞を舞う。

2 上演記録

上演年月日	西暦	記録名	曲名表記
天文1年5月1日	1532年	言継卿記	春栄
天文1年8月20日	1532年	言継卿記	春栄
天文7年3月26日	1538年	蜷川親俊日記	春栄
天文13年8月14日	1544年	言継卿記	春栄
天文19年4月3日	1550年	多聞院日記	春栄
天文19年4月6日	1550年	多聞院日記	春栄
永禄4年3月30日	1561年	三好亭御成記	春栄
永禄6年6月24日	1563年	言継卿記	春栄
永禄7年5月17日	1564年	言継卿記	春栄
永禄7年10月22日	1564年	言継卿記	春栄
永禄8年8月14日	1565年	言継卿記	春栄
永禄11年6月24日	1568年	言継卿記	春栄
永禄12年4月27日	1569年	言継卿記	春栄
天正8年3月6日	1580年	多聞院日記	春栄
天正13年10月13日	1585年	上井覚兼日記	春栄
天正14年9月8日	1586年	上井覚兼日記	春永
天正16年9月18日	1588年	能之留帳	春栄
天正18年3月28日	1590年	晴豊公記	春栄
慶長5年4月23日	1600年	能之留帳	春栄

3 現在の上演流派

五流