雲林院：乙

うんりんいん Unrin'in B

1 概要

芦屋の里に住む公光（ワキ）は、伝授された『伊勢物語』を愛読していた。ある日、紅の袴の女性と、束帯姿の男性が『伊勢物語』の冊子を眺めている夢を見る。近くにいた翁から、男は在原業平、女は二条の后、場所は紫野の雲の林、と教えられたところで、目が覚めた。そこで、公光は、従者（ワキツレ）を連れて、北山の雲林院へ赴く。夢で見た風景を実際に目にするが、男女の姿は見えない。土産にと花を折ろうとした公光は、花守の老人（前シテ）に咎められる。老人に尋ねられ、公光は夢のことを語る。すると老人は、この場が二条后の山荘の跡だと教え、ふたたび夢を待つように諭す。不思議に思った公光が、もしや業平ではと老人に問うと、老人は口を濁し、夕霞に紛れて姿を消す。その後、やって来た所の者（アイ）は、『伊勢物語』の作者について公光に語って聞かせる。公光の不思議な体験を聞いた所の者は、業平と二条后に違いないと推測し、逗留を勧めて、立ち去る。まどろむ公光の前に、在原業平の霊（後シテ）が在りし日の姿で現われる。二条后との恋を語り、夜遊の舞楽を見せるうちに夜明けが訪れるのだった。

2 現在の上演流派

観世・宝生・金剛・喜多