善界

ぜがい Zegai （是界／是我意）

1 概要

大唐の天狗の首領善界坊（前シテ）が仏法を妨げようと日本を訪れ、愛宕山（あたごやま）の天狗太郎坊（たろうぼう）（ツレ）と語らう。太郎坊は比叡山が仏教の中心地にあたることを教え、天狗たちは比叡山を標的に定める。一方で天狗たちは不動明王の威力を案じ、仏法に敵対してしまう天狗の身の上を嘆くが、ついには意を決し、比叡山の方へ去って行く。比叡山飯室の僧正に仕える能力（のうりき）（従者）（アイ）が天狗の羽風に吹かれ、宮中に行くのを断念する。祈祷の勅命を受けた比叡山飯室の僧正（ワキ）が牛車で宮中へ急いでいると、大天狗の正体を現した善界坊（後シテ）が飛び来る。善界坊は僧正を威嚇するが、僧正は祈祷で対抗する。僧正の祈祷により、不動明王や十二天が出現し、さらに山王権現（さんのうごんげん）や岩清水（いわしみず）の八幡神をはじめとする三十番神（さんじゅうばんしん）が風を吹き起こし、善界坊の翼は地に落ちてしまう。善界坊は二度と日本に来ないことを言い、雲の中へ消え失せる。

2 上演記録

上演年月日	西暦	記録名	曲名表記
文亀3年9月19日	1503年	実隆公記	首客
永正8年6月29日	1511年	隅田八幡史料	せかい
天文3年4月10日	1534年	言継卿記	是害
天文5年1月2日	1536年	天文日記	是害坊
天文6年2月25日	1537年	天文日記	是害
天文7年1月2日	1538年	天文日記	是害
天文8年1月15日	1539年	天文日記	是害
天文9年1月15日	1540年	天文日記	是害
天文12年1月2日	1543年	天文日記	是害
天文12年2月11日	1543年	多聞院日記	是害
天文12年2月21日	1543年	天文日記	是害
天文15年1月14日	1546年	天文日記	是害
天文15年2月12日	1546年	言継卿記	是害
天文16年1月2日	1547年	天文日記	是害
天文17年2月16日	1548年	言継卿記	是害
天文19年3月15日	1550年	多聞院日記	是害
天文20年10月8日	1551年	天文日記	是害
天文22年9月11日	1553年	天文日記	是害
天文23年1月10日	1554年	天文日記	是害
天文23年3月12日	1554年	言継卿記	是害
弘治2年2月12日	1556年	言継卿記	是害
永禄6年6月23日	1563年	言継卿記	是害
永禄10年6月24日	1567年	言継卿記	是害
永禄11年1月26日	1568年	言継卿記	是害
永禄11年6月24日	1568年	言継卿記	是害
天正11年8月15日	1583年	丹後細川能番組	是害
天正14年9月8日	1586年	上井覚兼日記	せかい
天正15年5月28日	1587年	伊達治家記録	是界
天正16年1月14日	1588年	伊達治家記録	是界
天正16年3月30日	1588年	能之留帳	善界
天正16年7月26日	1588年	毛利輝元上洛記	是界
天正17年2月20日	1589年	能之留帳	是界
天正17年12月19日	1589年	能之留帳	是界
文禄1年1月25日	1592年	能之留帳	善界
文禄1年1月28日	1592年	能之留帳	善界
文禄2年4月3日	1593年	能之留帳	善界
文禄2年10月29日	1593年	能之留帳	善界
文禄2年12月3日	1593年	能之留帳	善界
文禄3年4月16日	1594年	能之留帳	善界
文禄3年4月20日	1594年	駒井日記	善界
文禄3年6月9日	1594年	能之留帳	善界
慶長1年7月4日	1596年	能之留帳	善界
慶長2年3月14日	1597年	能之留帳	善界
慶長2年8月14日	1597年	能之留帳	善界
慶長3年5月2日	1598年	能之留帳	善界
慶長4年4月11日	1599年	能之留帳	善界
慶長4年8月5日	1599年	能之留帳	善界
慶長4年10月1日	1599年	能楽盛衰記	善界
慶長7年4月26日	1602年	能之留帳	善界
慶長7年12月4日	1602年	能之留帳	善界

3 異名（古名）

首客[しゅかく]

4 現在の上演流派

五流