松虫

まつむし Matsumushi

1 概要

阿倍野（大阪府）で酒を売る市人（ワキ）のもとへ男（前シテ）が仲間たち（前ツレ）とやって来る。男は「松虫の音を聞くと友を思い出す」と言い、市人がそのわけを尋ねると、男は次のように語る。かつてこの地に二人の親友がいた。あるときその一人が松虫の音にひかれ、草むらの中へ入ったままなかなか戻ってこなかった。もう一人が様子を見にいくと、男は草むらで亡くなっていた。男は語り終えると、市人にその友に先立たれた男は自分だと市人に打ち明けて消えていく。所の者（アイ）から再び二人の友人の話を聞いた市人は回向を行う。やがて男の霊（後ツレ）が現われ、亡き友を偲び懐旧の舞をみせ、夜明けとともに消えていく。

2 上演記録

上演年月日	西暦	記録名	曲名表記
文亀3年9月19日	1503年	実隆公記	松虫
永正11年10月28日	1514年	申楽談儀附載	松虫
天文3年4月10日	1534年	言継卿記	松虫
天文5年2月12日	1536年	中臣祐金記	松虫
天文6年2月25日	1537年	天文日記	松虫
天文8年3月3日	1539年	蜷川親俊日記	松虫
天文12年2月12日	1543年	多聞院日記	松虫
天文12年2月19日	1543年	天文日記	松虫
天文13年1月16日	1544年	天文日記	松虫
天文15年6月9日	1546年	天文日記	松虫
天文15年12月22日	1546年	光源院殿御元服記	松虫
天文20年1月26日	1551年	天文日記	松虫
天文22年1月11日	1553年	天文日記	松虫
天文23年2月24日	1554年	天文日記	松虫
永禄7年5月20日	1564年	言継卿記	松虫
永禄9年6月24日	1566年	言継卿記	松虫
永禄11年2月29日	1568年	野坂家文書	松虫
天正17年11月14日	1589年	丹後細川能番組	松虫

3 現在の上演流派

五流