黒塚

くろつか Kurotsuka （安達原[あだちがはら]）

1 概要

那智（なち）（和歌山県）の山伏・祐慶（ゆうけい）（ワキ）は供の山伏（ワキツレ）と従者（アイ）を連れ、諸国行脚の途次、陸奥（みちのく）の安達原（福島県）に着く。日が暮れ、宿を探す山伏一行は、近くに庵を見つけ、宿を求める。庵に住む女（前シテ）は、一度は断るが、山伏一行に宿を貸すことにする。女は山伏の求めに応じて糸繰りの様をみせながら、過去の自分を悔やみ、世の無常を嘆く。女は夜が更け寒くなったので、山伏のために裏の山へ薪を取りに行くと言う。女は一行に決して寝室をのぞかぬよう言い残し、出ていく。好奇心にかられた従者が、女との約束を破り寝室をのぞくと、そこには人間の死骸が山積みとなっていた。女の正体が安達原に住む鬼と知った山伏一行は、庵を逃げ出す。約束を破られた女は鬼（後シテ）となって山伏の後を追う。しかし山伏たちに祈り伏せられて消え去る。

2 上演記録

上演年月日	西暦	記録名	曲名表記
寛正6年2月28日	1465年	親元日記	安達原
文明15年3月12日	1483年	（後鑑）親元日記	安達原
天正16年5月8日	1588年	能之留帳	黒塚
天正17年2月20日	1589年	能之留帳	黒塚
天正17年12月19日	1589年	能之留帳	黒塚
文禄1年5月24日	1592年	能之留帳	黒塚
文禄3年4月15日	1594年	能之留帳・駒井日記	黒塚
文禄3年11月2日	1594年	能之留帳	黒塚
文禄3年12月8日	1594年	能之留帳	黒塚
文禄4年5月21日	1595年	能之留帳	黒塚
慶長1年3月8日	1596年	能之留帳	黒塚
慶長4年3月25日	1599年	能之留帳	黒塚
慶長4年5月16日	1599年	能之留帳	黒塚
慶長4年8月14日	1599年	多聞院日記	黒塚
慶長7年4月21日	1602年	能之留帳	黒塚
慶長7年12月11日	1602年	能之留帳	黒塚

3 現在の上演流派

五流