「明暦野田本「かづらき天狗」」の版間の差分
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<Br>{次第}法のためにと篠懸は。〃。山また山をわけうよ》<Br>{ワキ詞}〽︎是は峯入先達の客僧にて候。此度又諸国の山伏達を伴ひ。只今峯入仕候。<Br>{上哥}《かづらきや。高間の嶺の朝ぼらけ。〃。花かと見えてしら雲のゆく衛はるけきそばつたひ。なべてとふべき旅にやは。我は法にとそみかくだ。苔の筵もいとはじや〃。》<Br>{詞}如何にかた〃に申げき事の候。今夜は此所に通夜申。心静に勤をはじめうするにて候<Br>{シテサシ}〽︎とう〃たる山路いづれの時か尽ん。けつけつたるけいせむ到所にきく。風えうせいを動かしてさんけんぽふ。いづれのせうくは秋雲をへだつ。荒心すごの山洞やな。<Br>{ワキ詞}〽︎我観念の眼の前には。三密の月すみやかにして。れう〃とある折節に。忽然と。来る物を見れば。さも不思議なる人体なり。<Br>{シテ詞}〽︎御身いくばくの法力を,え。かばかりの慢心を具足せし。其妄念は如何ならん。<Br>{ワキ}〽︎う〃扨は心得たり。わが行力を,さまたげむとて。魔軍の霊気来りたるな。愚なりとよ法性の。月は曇らぬ山陰に。顕れ出る名をなのれ。<Br>{シテ}〽︎是は此山に年経て,すめる大天狗の眷属なり。先此よしを師匠に申さん。其程は暫こ〃に待たまへと》<Br>{上哥同}《夕の雲も凄じく。〃。あらしはげしき高根より。らうせいの高声にて帰れといへば谷嶺も。響き渡れる山彦の。よべばこたへて失せにけり〃》<Br>{上同}《山河草木震動し。風は木を折て磐石を崩す天狗だふしに。心も,みだる〃計也》<Br>{上哥同}《ふしぎや高根に吹みだれ。〃。嵐こがらしうづまくと見えしが顕れ出たる大天狗の。はしあし剣の刃の,ごとくにて両眼日月に。異ならず》<Br>{ワキ上}〽︎《旋陀摩訶〓 | <Br>{次第}法のためにと篠懸は。〃。山また山をわけうよ》<Br>{ワキ詞}〽︎是は峯入先達の客僧にて候。此度又諸国の山伏達を伴ひ。只今峯入仕候。<Br>{上哥}《かづらきや。高間の嶺の朝ぼらけ。〃。花かと見えてしら雲のゆく衛はるけきそばつたひ。なべてとふべき旅にやは。我は法にとそみかくだ。苔の筵もいとはじや〃。》<Br>{詞}如何にかた〃に申げき事の候。今夜は此所に通夜申。心静に勤をはじめうするにて候<Br>{シテサシ}〽︎とう〃たる山路いづれの時か尽ん。けつけつたるけいせむ到所にきく。風えうせいを動かしてさんけんぽふ。いづれのせうくは秋雲をへだつ。荒心すごの山洞やな。<Br>{ワキ詞}〽︎我観念の眼の前には。三密の月すみやかにして。れう〃とある折節に。忽然と。来る物を見れば。さも不思議なる人体なり。<Br>{シテ詞}〽︎御身いくばくの法力を,え。かばかりの慢心を具足せし。其妄念は如何ならん。<Br>{ワキ}〽︎う〃扨は心得たり。わが行力を,さまたげむとて。魔軍の霊気来りたるな。愚なりとよ法性の。月は曇らぬ山陰に。顕れ出る名をなのれ。<Br>{シテ}〽︎是は此山に年経て,すめる大天狗の眷属なり。先此よしを師匠に申さん。其程は暫こ〃に待たまへと》<Br>{上哥同}《夕の雲も凄じく。〃。あらしはげしき高根より。らうせいの高声にて帰れといへば谷嶺も。響き渡れる山彦の。よべばこたへて失せにけり〃》<Br>{上同}《山河草木震動し。風は木を折て磐石を崩す天狗だふしに。心も,みだる〃計也》<Br>{上哥同}《ふしぎや高根に吹みだれ。〃。嵐こがらしうづまくと見えしが顕れ出たる大天狗の。はしあし剣の刃の,ごとくにて両眼日月に。異ならず》<Br>{ワキ上}〽︎《旋陀摩訶〓{口へん+魯}遮那。娑婆多耶吽多羅化漢満。旋陀摩訶〓{口へん+魯}遮那。娑婆多耶吽多羅化漢満。旋陀摩訶〓{口へん+魯}遮那。娑婆多耶吽》<Br>{上哥同}《行者の加持力隙もなく。〃。もみ掛け責かけ祈り給へば。此時窟は鳴動して。大石左右へ聞くと見えしが,をの〃眷属二行に坐して役行者は,あらはれたり》<Br>{ツレ}〽︎汝,しらずや我は是今日成に至る迄。仏法を守護し衆生を守る。開山役のうはそくなり。<Br>{上哥同}〽︎《大天狗は,是を見て。〃。おどろき高根にのぼらんとするを。きがく童子は,おつつめ給ひ。さん〃に,うちふせ苦を見せ給へば,すゑにすがり。はるかの谷に下りけるを》<Br>{行者}〽︎《行者は,みつえを,とりなをし》 <Br>{同}《行者は,みつえを,とりなをし汝しらずや神国たり。など仏法にさまたげをなし〃と。いかり給へば,いまより後は仏法を守護神となるべしと。約諾かたき岩根をかけり。かけりゆけば。うはそくはけむそくをともなひ給ひ。優婆塞はけむぞくをともなひ給ひて。また,がむくつにぞ入給ふ》 |
2024年11月30日 (土) 02:06時点における最新版
11-553 かづらき天狗
{次第}法のためにと篠懸は。〃。山また山をわけうよ》
{ワキ詞}〽︎是は峯入先達の客僧にて候。此度又諸国の山伏達を伴ひ。只今峯入仕候。
{上哥}《かづらきや。高間の嶺の朝ぼらけ。〃。花かと見えてしら雲のゆく衛はるけきそばつたひ。なべてとふべき旅にやは。我は法にとそみかくだ。苔の筵もいとはじや〃。》
{詞}如何にかた〃に申げき事の候。今夜は此所に通夜申。心静に勤をはじめうするにて候
{シテサシ}〽︎とう〃たる山路いづれの時か尽ん。けつけつたるけいせむ到所にきく。風えうせいを動かしてさんけんぽふ。いづれのせうくは秋雲をへだつ。荒心すごの山洞やな。
{ワキ詞}〽︎我観念の眼の前には。三密の月すみやかにして。れう〃とある折節に。忽然と。来る物を見れば。さも不思議なる人体なり。
{シテ詞}〽︎御身いくばくの法力を,え。かばかりの慢心を具足せし。其妄念は如何ならん。
{ワキ}〽︎う〃扨は心得たり。わが行力を,さまたげむとて。魔軍の霊気来りたるな。愚なりとよ法性の。月は曇らぬ山陰に。顕れ出る名をなのれ。
{シテ}〽︎是は此山に年経て,すめる大天狗の眷属なり。先此よしを師匠に申さん。其程は暫こ〃に待たまへと》
{上哥同}《夕の雲も凄じく。〃。あらしはげしき高根より。らうせいの高声にて帰れといへば谷嶺も。響き渡れる山彦の。よべばこたへて失せにけり〃》
{上同}《山河草木震動し。風は木を折て磐石を崩す天狗だふしに。心も,みだる〃計也》
{上哥同}《ふしぎや高根に吹みだれ。〃。嵐こがらしうづまくと見えしが顕れ出たる大天狗の。はしあし剣の刃の,ごとくにて両眼日月に。異ならず》
{ワキ上}〽︎《旋陀摩訶〓{口へん+魯}遮那。娑婆多耶吽多羅化漢満。旋陀摩訶〓{口へん+魯}遮那。娑婆多耶吽多羅化漢満。旋陀摩訶〓{口へん+魯}遮那。娑婆多耶吽》
{上哥同}《行者の加持力隙もなく。〃。もみ掛け責かけ祈り給へば。此時窟は鳴動して。大石左右へ聞くと見えしが,をの〃眷属二行に坐して役行者は,あらはれたり》
{ツレ}〽︎汝,しらずや我は是今日成に至る迄。仏法を守護し衆生を守る。開山役のうはそくなり。
{上哥同}〽︎《大天狗は,是を見て。〃。おどろき高根にのぼらんとするを。きがく童子は,おつつめ給ひ。さん〃に,うちふせ苦を見せ給へば,すゑにすがり。はるかの谷に下りけるを》
{行者}〽︎《行者は,みつえを,とりなをし》
{同}《行者は,みつえを,とりなをし汝しらずや神国たり。など仏法にさまたげをなし〃と。いかり給へば,いまより後は仏法を守護神となるべしと。約諾かたき岩根をかけり。かけりゆけば。うはそくはけむそくをともなひ給ひ。優婆塞はけむぞくをともなひ給ひて。また,がむくつにぞ入給ふ》